彼氏契約書
11.彼女に優しく触れたのは…
「・・・美緒どうした?」

「・・・・」

朝、専務室の窓越しに腰かけ、沢山の高層ビルを見つめる。

そんな私の声をかけたのは、社長だった。


蒼空の手を払いのけ、行ける場所はここしかなかった。

一人きりになれる、心を落ち着かせる場所はここしかない。


…笑えるよね。会社がそんな場所なんて。


振り返らない私を見て溜息をつき、それでも私を気にかけ、

社長は私の後ろまでやってきた。


「まだ7時前だぞ?なんかやり忘れてた仕事でもあったのか?」

私の背中に声をかけるが、私からの返事はなかった。


「…須藤と、何があった?・・・昨日のせいか?」

「・・・・」

それでも私は何も言わなかった、いや、言えなかった。

一言でも発してしまえば、涙がこぼれてしまいそうだったから。


・・・・?!

「雄・・一・・」

後ろから抱きしめられ、驚いてしまう。


「あんな勘違い男、やめちまえ」
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