彼氏契約書
12.最後の契約書
安定期を過ぎても、予断を許せなくて、

臨月まで入院する事になってしまった。

社長の計らいで、仕事はお休みさせてもらっていた。

…それでも、こっそり、誰もいない部屋の中で、

思いついたデッサンを書き残していた。



「・・・赤ちゃんの服ばかりだな」

「?!…社長、驚かさないでください」

私はホッと溜息をつく。

だって、蒼空に見つかると、スッゴク怒られるから。

大事な体なんだから、無理しないでと何度言ったらわかるんですか!って。



「この際だから、ベビー服部門も立ち上げるか?」

「何言ってるんですか、社長。これはあくまでも私の趣味で」


「いや、いい機会だ、会議でそれを皆に見せて、どうか検討してみよう」

そう言って社長は微笑んだ。


「…社長」

「なんだ?」


「ここに、蒼空を呼んでくれたのは、社長ですよね」

私の言葉に小さく頷いた。そして溜息をつく。


「お前ら見てたら、腹が立つんだよ・・・ったく。

サッサとくっつかないから、変な誤解が生じるんだ。

やっと結婚までこぎつけてくれて、せいせいしてるんだ」
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