鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
課長が帰って洗い物をし終わり、リビングに戻ろうとするとテレビを見ながらさりげなく冴子さんの肩を抱くお父さんの後ろ姿が目に入った。そして、そのお父さんに寄り添う冴子さん。

なんだかいたたまれなくなってそっと外に出た。あの場所はお母さんの特別な場所だった。

仲良しのお父さんとお母さんは、私の前でも手を繋ぐくらいで、見てる私が恥ずかしいくらいだった。でも、もうその場所はお母さんの場所じゃない。

悲しかった。だけどお父さんが幸せそうで嬉しい気持ちもあった。だからこそ、私のワガママで二人の再婚を反対していいのかな。お父さんの幸せを私が奪ってもいいの?そんなモヤモヤした気持ちが込み上げてきた。


でも、再婚を認めたら私は、課長と兄妹になる。課長はきっとそれでも冴子さんが幸せならいいって言うんだろう。でも私は、今更課長と兄妹なんて考えられない。

「こらっ、一人でこんなところにいたら危ないだろ」

階段に座っていた私の頭をそう言って課長がコンとこついた。そして課長は私の隣にそっと座った。

「冴子がなかなか帰って来ないから迎えに来たら、佐伯がこんなとこにいるから驚いたよ。どうした?二人がイチャついて入れないとか?散歩でもするか?」


コクンと頷くとそっと差し出された手。一瞬躊躇ったけれど、その手にそっと自分の手を置くとギュッと握られ引っ張り起こされた。
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