「あっ、すみません」

急いで散らばったものをしゃがみこんで拾って袋の中に入れる。ティラミス、傾いてしまったかもしれない。拾い終えて肩を落とすと、ポンと頭に手が置かれた。


「俺のティラミス落としたんだからさ、敬語禁止な。後、俺がメガネかけてないときは『課長』禁止」


私と同じ目線で何度もポンポンと頭を撫でる課長。少しだけ頬が赤いような気がする。でも、さすがに敬語禁止?課長禁止?そんなの無理すぎる。


「そ、そんなの無理です。課長は課長ですよ。 敬語なしなんてそんなの失礼ですし!!」


無理無理と目の前で両手を振ると口をプーっと膨らませて拗ねる仕草をする課長。


「課長も敬語も俺が無理ですよー。大体、どこをどう見たら課長に見えますかねー?どう見てもただのゲーム好きのガキっぼい男でしょう」


「で、でも・・・」

「せっかくオンとオフを切り替えてんのにオフモードで課長なんて呼ばれると気が休まらないんだよ」


「ほら、行くぞ」と私の手首を引っ張り立ち上がらせる課長。そしてそのまま離すことなく、歩き始めた。ドキドキと心音が響く。でも離したくない。それに今ならさりげなく聞けるかもしれない。

「あの・・・一つ聞いてもいいですか?」


「悪い。ちょっと電話出てもいい?」



今しかないと出した勇気は携帯にかき消された。立ち止まり邪魔にならないように移動した課長に着いて、私も路地に入った。あまり、立ち聞きするのはよくないと思ったけれど課長に手招きされたからついていくことにした。

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