折れない花
きっと役に立てるから
千秋と真穂は、相変わらず飽きもせず毎日を一緒に過ごしていた。

真穂にとって、バスケ部の活動は楽しかった。
練習はキツいし、汗くさいし、なんならサッカー部の男子と一緒に筋トレなんかしなくちゃならない。
女子人気は著しく低いし、真穂は、顧問からもこんな女の子らしい子が続けられるのかと心配されるくらいだった。
中学のテニス部とは大違い。

けれど真穂は、辞めたいとは一度も思わなかった。

テニス部時代、女子人気は非常に高く、部員数もスタメン以外で1学年50人程いるくらいの中、試合に出れるのは、スクールまで通っているトップクラスの選手ばかりで、
真穂達含むその他大勢は、素振りをしたり玉拾いをしたり、およそ部活らしさとはかけ離れて活動していた。

そんな中で、同じ目標に向かう結束力やら仲間意識が産まれるはずもなく、ただただ練習に励むのみ、意識もまるで低いままだった。

そんな中、真穂は同じクラスのバスケ部の少女に出会った。
名前は梨花。
真穂は朝が弱く、いつも朝礼ギリギリに登校するので、ついに見かねた担任の先生から真穂だけ朝早く登校するようお達しを頂いてしまった。
眠い目をこすりながら、
自転車でけやき並木を抜ける。
真穂は、この並木道が好きだった。

新緑のいい香りがする。
自転車置き場に自転車を置き、
教室へ向かう途中、教室の目の前の中庭で、
梨花の姿を見つける。

何してるんだろう?

興味本意で遠目に眺めていると、
中庭のバスケットゴールに向かい、
必死にシュートの練習をしている梨花の姿が目に入った。

綺麗なシュートフォーム。
バスケに馴染みのない真穂にとっても、
それはとても綺麗な孤を描いていて、
パシン、、、と綺麗な音を立てていた。

梨花は、何度も何度もシュートを打つ。
何度も、何度も、繰り返し。

真穂は、その姿だけでなく、梨花の真摯な眼差しに強烈な印象を覚えていた。

そしてそれは、次の日も続いていた。
毎朝繰り返される、綺麗な音。
次の日も、次の日も、その光景はやむことがなかった。

梨花と真穂は特別親しいわけではなかったので、同じバスケ部の親しい友人に、
梨花のことを聞いてみた。

「梨花はね、、、」
彼女は、少しためらいながら話しはじめた。

「梨花は、フォワードなんだ。
でも元々、フォワードになりたくてってわけじゃなくてね。
だけど、同期に、背が高くて体も大きい、バスケにすごく向いてるセンターのこがいてね。
それから、背は小さいけどドリブルが上手くて、センスのすごくあるガードのこがいて。
あと、すごく足の速いこがいるんだ」

真穂は、イマイチ的を得ず、ポカンと聞いていた。

「だから、梨花はね、、、
自分には、何にも取り柄がないって。
だからね、3Pだけは、絶対にどんな時も決めるようになるんだって。
チームが苦しい時、わたしが3Pをいつでも決められるシューターになったら、
きっと流れを変えられる。役にたてるって。
だから、ああやって毎日欠かさず、練習してるんだよ」

真穂は、衝撃を受けた。
そうか。
付け焼き刃で何かしようとしたって、
気持ちだけじゃできないんだ。
積み重ねないから、なんにもできないんだ。

今できないならできないなりに、
出来ることを積み重ねれば、
出来るようになるかもしれない。
仲間の役に立つことだって出来るんだ。
自分にしか出来ないことが、
役に立てることがあるかもしれないんだ。

わたしは初心者だけど、、、
頑張ったら、
仲間になれるかもしれない。
役に立てるかもしれない。

真穂は、その時、
高校に入ったらバスケ部に入ろう、
そう決めていた。
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