異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



あたしが悩んでいたのは、バレンタインデーという地球独特のイベントに関してだった。


最近は義理チョコと同じくらい友チョコも当たり前だし、男性からの逆チョコや自分用に買うMyチョコもあるけど。


やっぱりメインは女性から男性にチョコを送る……なんだよね。


あたしがそう説明すると、キキだけじゃない。他の若い侍女や下働きの女の子達がいつの間にか周りに集まってきてた。


「へえ! 作ったお菓子で気持ちを伝えるなんて、素敵な習慣ですね」


まだ十代とおぼしき彼女達は、目をキラキラと輝かせている。ほんのりと頬を染めた子もいるから、きっと好きな人を思い浮かべているんだろう。


矢継ぎ早に受ける質問に答えを返しながら、恋する女の子の初々しい様子をあたしはちょっとだけ羨ましく思う。


(あたしももっと素直になれたらいいのになあ……我ながら、全然可愛げがないもんね)


「お菓子だけじゃなくて他に何か一つプレゼントがあった方が良いよ。実用的なものが喜ばれるかな」


お父さん限定という少ないバレンタインの経験から、役立つか解らないアドバイスをみんなにした。


……ら。


何故か、キキの目がきら~んと輝いたのは気のせい?


嫌な予感がするあたしは、少しずつキキから離れて逃亡する準備をしたんだけど。


逃げ出す前に、がしっと両腕を掴まれて逃亡に失敗しました。


「ユズ……もちろん、あなたも作るのよね? 当然よね??」


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