異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



『最近、ろくに眠れてないようだね。悪い夢でも見てるのかい?』


「……そんなこと、ない」


あたしは顔を背けようとしたけど、ティオンはそれを許さなかった。


『僕に隠し事はなしだよ、ユズ。君も知ってるだろう? 僕はある程度の魔法も使える。君の意思に関係なく、全てを喋らせることも出来るんだよ』


柔らかな、脅しだった。


確かに、あたしはティオンの力でこの世界にやって来た。それだけで彼がどれだけすごいか理解できる。


ティオンがその気になったら、あたしはきっと思うままにされるんじゃないだろうか。


今の今までティオンはあからさまに魔法を見せることはなかったけど。


……だけど。


どうして、ティオンはそんなに悲しげな瞳をしてるの?


まるで、自分自身がこの力を望んでいない。そんなふうにも取れるよ。


「……確かに悪夢は見るよ」


あたしは知らず知らずのうちに、自分から話をしてた。


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