Dear.

離さないで

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「ゴホッ、ゴホゴホッ..」


ポタポタと手に収まりきらない僕の血が畳に落ちてゆく



風邪かな、と思っていたけどそうじゃないことここまで来たら医者じゃない僕だって分かる


これは労咳だ


治ることのない死の病


『私を連れ去ってよ..』


清史郎の墓で慶がポツリと呟いたその一言



確かめるように僕がもう一度聞けば彼女は怯えるようにして首を横に振るだけだった



あの時、無理矢理にでも連れ去ってしまえばよかった


僕以外の誰かに嫁ぐ君なんて見たくない


知らない誰かに取られるなんて嫌だ



そう思っているのに、僕に君を連れ去る資格なんてない


「くそっ..!!!!」


ダンッ、ともどかしさのあまり畳を叩くが、残るのは虚しさばかり



僕には時間がない、この身に抱えているのは死の病



そんな僕が慶を攫って幸せに出来るとは思わない

思わないけど、慶と共に生きる未来を願わずにはいられない
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