君の生きた証~love in war~

アレンside ~暗雲~

「遅かったな、アレン」

「あぁ」



自室に戻ると、ルームメイトのロルフが煙草を弄んでいた。



「おい、煙草はオーギュスト先生に止められてるだろ」

「吸わないさ。いつまでもつか分からねえけどな」

「ったく・・・」




去年のクラスメイトであるロルフは、俺とはまた別の国からこの学校へやってきた留学生だ。

ルームメイトの発表がされたときは、正直、困惑した。





ロルフの少しばかり軽薄な空気感は、俺にはないものだったから。


実際のところ、第一印象だけでなく、ロルフは軽い奴だった。

煙草も、酒も、女遊びも、学年内で有名なレベル。




真面目なだけが取り柄の俺は、少々不安だった。




でも、今なら分かる。

去年の担任のキャロライン・ロイドバーグ先生は、正しい決断をした。






俺は、ロルフぐらい軽やかな相手がルームメイトでなかったら、会話もろくに出来なかっただろう。



同室の俺が過ごしやすい程度に空気を崩し、同室の俺が困らない程度に遊ぶ。

ロルフは、そういう芸当がいとも簡単にできる奴だ。




感謝している。





「そーいやさ」

「ん?」

「まーた、ナタリーとは進展なしか?」

「・・・そういうお前は、パトリシアと手も繋いでないだろ」




からかってくるロルフに言い返す。

平和で、穏やかな日常。






・・・ちゃんとキスはしてるからな。

心の中で、反論を付け加える。
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