隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話

決断する子供



 金曜の夜

今日はお父さんがご近所さんに誘われて
飲みに行くからお店も早じまい。

また週末に彼女が来て
顔を見てしまうのが嫌だから

アイスと一緒に忍者マグカップ持参で隣に行こうとしていると

「どこ行くの?」

アイス並みの冷たい視線を背中に浴びる。

お母様に呼び止められた。

「えーっと……隣」
嘘をついたらバレた時怖いので、正直に言うと

「達ちゃんとこ?」
ワザとらしく聞かれた。

その高い声
見透かしてる感アリアリですけど。

「田辺さんとこ」

「噂じゃ元の奥さんがチョロチョロしてるんだって?」

さすが情報通。

「変に巻き込まてるんじゃないでしょうね」

「どーゆーことよ!」

売り言葉に買い言葉
ふたりで声を上げてしまう。

「惚れてるの?」

ズバリ聞かれて黙っていると

「見てたらわかった」
タメ息混じりで言われてしまった。

バレバレだった?
一気にテンション下がってしまう私。

「……それでいいの?」

「うん」
素直に返事してお母さんの目を見ると、優しく笑ってた。

「あんたは頑固だもね。捨て犬とか拾うタイプだし」

犬と一緒にする?
似たようなものかもしれないけどさ。

「今度ゆっくり教えなさい。アイス溶けるよ、早く行きな!」
背中を押され
私は「行って来ます」って元気に家を出る。

今度ゆっくり話すから。

元の奥さん登場から苦しい日々だったけど、今のでちょっと元気が出てきたかも。


うん。大丈夫。

心に言い聞かせ

隣に走る。


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