齧り付いて、内出血
Ⅱ.愛おしい重さ

昼間に突然現れた日から一週間くらい音沙汰のなかった久世は、迷惑なことに真夜中にこれまた突然やってきた。

アポなしはこの男の常套手段だ。


『今、夜中。』

「久しぶり、とか言えねえのかこの口は。――てか寒い、早く入れて。」

『寒い寒いって、いつもそればっか。』


玄関先、外の冷気を多量に含んだ冷たいからだでパジャマの私を抱きしめる。


口からでてくるのは相変わらず不細工な言葉たちなのに、心の中では安心していた。

――もう、来ないかと思ってた。

いつ来なくなってもおかしくない関係だから、このまま終わってしまうのかなって、今日は来るか明日は来るかって夜になるたび気にしてた。


なんて、そんな女々しいこと逆立ちしても言えっこない。

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