桜の木の下で-約束編ー

9.夢の始まり ~ 引き寄せられる心 ~ - 咲 -



桜鬼……。



桜の花弁に惹かれるように
その名前を口にした途端、
私の周囲はまた変化を遂げた。



夏休み最終日、YUKIが記者会見を開き、
あの日、有香さんに誘われていた
トパジオスレコードとオフィス・クリスタルへ
移籍が発表された。


その一週間後には依子先輩のお父様の脱税と
汚職事件がマスコミに報じられ、
ルビーは倒産。



二学期が始まって、
二週間で依子先輩の名前は退学者として
張り紙が出された。


依子先輩が居なくなった途端、
私の周囲には、
いつもの日常が戻ってきた。


二学期になり、三年生部員が正式に引退した今、
新主将となったのは、伊集院穂乃香先輩。


穂乃香先輩の指導の下、
私たちはいつもと変わらない風景が始まる。



時代は変わっても、
テニス部の練習メニューが変わることはない。



朝練・授業・放課後練習。




部活で、ラケットを持って本格的に練習させて貰えるようになった今も
龍王寺さまのスクールで、今も練習をさせて貰ってた。

そのスクールに、穂乃香先輩も通っていらしたことを
二学期になって知った。



「咲、今日の練習。
 スマッシュの時のラケットの面をもう少し意識しなさい。

 ラケットの中心で、しっかりと狙いを定めて相手のコートの急所に打ち込まないと意味がないわ。

 咲の球は、勢いがあるの。

 しっかりとコントロール出来れば、成績はしっかりと残せてよ」



そう言って部活終了後のコート整備をする
私の元へと近づいて助言をくれた。




一学期、特待生としての成績を残すことが出来なかった私は
二学期も引き続き、特待生として
免除対象となるかどうかの審査があったらしい。



その時に、二学期の可能性を語って
私を引き続き、特待生として残らせてくれたのは
この新部長を拝命した、
穂乃香先輩の説得が大きかったのだと司情報で知った。



そして九月下旬から始まった
校内の選抜トーナメント。


私は順調に成績を勝ち残して、
No.2としての成績で、穂乃香先輩の次に名前を刻むことが出来た。



移籍した直後から、
さらに変化を遂げたのは私を取り巻く環境。


私と和鬼の関係をサポートすると
宣言した通り、移籍後、すぐに私の名前は
事務所公認のYUKIの恋人とされた。


一般人故に、写真が公開されることはなかったけど

譲原 咲の名前は、
YUKIの恋人として誰もが知るところになった。

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