私たち、政略結婚しています。

雨に濡れたキス



「佐奈!止まれ!」

雨の音に負けないように叫ぶ。

「おいっ!佐奈!話を聞け!」

俺の声が聞こえたのか佐奈の走る速度が上がる。


その時。
水溜まりで滑った佐奈のバランスが崩れかけた。

あ、危な……!と思った瞬間。

ズシャッ!

彼女は転倒し地面に倒れた。

「佐奈っ」

俺は佐奈に駆け寄りその背に触れた。

すると佐奈はその俺の手を軽く振り払う。

「…触らないで」

「大丈夫か?怪我は」

身体を起こそうとすると佐奈は俺を見上げて睨んだ。

「触らないでってば!何なのよ!放っておいてよ」

佐奈の剣幕に俺は出していた手を引いた。

濡れて泥だらけになった中でその瞳だけが鋭く光っていた。



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