私たち、政略結婚しています。

奇怪な行動



「浅尾ー!背景のパターンの確認は済んでるか?」


「はい!そのまま撮影に入っていいです!モデルの衣裳確認も済んでます!」


週明けから巻頭撮影が始まり、私達は色々あったことを忘れてしまうほどの多忙さに巻き込まれていた。

「佐奈、こっちもOKだから次そのまま入って」

「うん。ありがと」


克哉は伝言を事務的に伝えるとそのまま私から離れて走り去る。

……が、クルッと向きを変えて再び私の方へと戻ってきた。


「え。どうしたの」

言い忘れかと思い、聞くと私が見ていたタイムスケジュールのファイルを私の手からすっと取り上げた。

「ちょっと。何よ」

私が彼に目を向けると、克哉はニコッと笑う。


「頑張るのは結構だが、帰ってから倒れ込まないように余力を残しとけよ」

「は。何でよ」


「俺が、寂しいから」

「えっ……」


そのまま再び私の手にファイルをトンッと戻して小走りに去って行く。


私はそんな彼の後ろ姿をしばらく見つめていたが、急に恥ずかしくなってボッと顔を熱くした。


なっ………!何なのよ!仕事中に……。


急に甘く変貌した克哉の行動にいまいち慣れない。



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