私たち、政略結婚しています。


「…じゃあ…、実家に、帰るわ。…あり…がと」

それだけ告げると、佐奈は部屋を出て行く。

俺は拳を握り締めたまま、動けなかった。

伝えてしまいたい。
お前が好きだと。

始まりや状況が当たり前で自然なものだったならば迷わずそうしているだろう。

だが、俺達は違う。
お前を脅したような形を取りたくはない。

そっと、棚の引き出しを開けて小さな箱を手に取る。

中を開くと、エンゲージリングが二つ並んで輝いている。

『forever love K to S 』

内側に刻まれた刻印を見つめながら、俺は脱力感に包まれていた。




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