私たち、政略結婚しています。

「よし。これ早く食って一緒に風呂に入ろう」

「は!?何でよ」

「お前。何驚いてんだよ。新婚と言えば一緒に風呂に入るもんなんだぞ」

「そうなの!?…てか、普通は…でしょ?私たちは、その…」

俺はムッとした。

「何だよ。普通じゃないのか」

「だって…」

政略結婚だとでも言いたいのか。
完全否定は確かにできないけど、普通俺に言うか!?

気を遣えってんだよ。

「お前さ。そういうとこが、むかつくんだよ」

「何を怒ってるの…?」

バカで、早とちりで、気も利かない。
負けず嫌いで、家事も得意ではない。
人の心配ばかりして、自分は後回しにする。

そんなお前だから、一緒に過ごした時間分、嵌っていく。

一番馬鹿なのは、俺だ。
佐奈に結婚しようと話した時に素直に『お前が気になる。これからきっと好きになる』と正直に言えば良かったんだ。

後悔しても、もう遅い。

「今日は特別に俺がお前を洗ってやるよ」

「何言ってるの。一緒になんて入らないわよ!バカ!エッチ!男ってすぐそれよね!嫌よ!」

「バカはお前だ!言うことを聞け」

ぎゃあぎゃあ言い合う。
かけがえのない二人の時間。

悪いな。今はまだ、離してやれない。

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