私たち、政略結婚しています。
私たちしか知らない事情を、中沢さんは知っていた。
私を傷付けないように気を遣いながら、私ではない人との未来を頭に描いている。

「佐奈さーん?マジ大丈夫かよ。顔色悪いぞ。あ、アノ日だっけ?…いや、違うよな?って、何を考えさせてんだよ、お前は」

もう、…耐えられない。
自分が惨めで…嫌いになる…!

「…克哉」

「お。ようやく反応したな。遅ぇよ」

「もう…、…解放してよ」

「は」

私は動きを止めた彼に、一気に告げた。

「私、耐えられないの。もう、あんたの顔なんて見たくはないのよ。…あんたが…嫌いで堪らないの」

「え…」

愕然とした表情の克哉を見ながら、さらに付け足す。

「毎日…辛くて、自分は不幸だと思ってた。あんたといて…幸せなんて、感じたことはないの」


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