叶わぬ恋の叶え方
電話
それからしばらく坂井先生と会う機会はなかった。

一の宮に行けば、彼に会えるかもしれないことはわかっていたけど、それを期待してお社に行くのはなんか気が引けた。

一度彼の誘いを断っているのに、ひょっこり会えることを期待しちゃうなんて痛いような気がした。

そうは言っても、喫茶店で先生が話していたことを色んな角度からあれやこれやと考えちゃってる咲子がいる。

例えば、坂井先生と元妻の風変わりな関係。

どうやら二人は恋愛感情で結ばれた間柄ではなかったらしい。

 彼の話の断片からすると、二人はどうやら同性の友達のような関係にあるらしいが。

 元妻の元彼(ちょっとややこしいけど)が先生の親友で、元彼は海外に移住したまま彼女を省みなかったようだ。友人として親友のした仕打ちに責任を感じた先生は、傷心の彼女(元妻)と付き合うようになった。

 いくら友達といっても、そこまで責任を負うものなのだろうかとも思うけど、ともかく二人はおそらく「友人」として馬が合った。あまりにも波長が合ったので結婚までしてしまったということだ。

 お見合いで結婚する夫婦もいるけど、そうではないのに気が合って結婚する夫婦なんて初めて聞いた。世の中には色々な夫婦の形があるということか。

「友人」と結婚することを選んだくらいだから、若かりし頃の先生にはおそらく恋人はいなかったのだろう。もし彼に恋人がいたら、その女性を優先するはずだ。


 先生は今まで恋愛をしたことがあるのだろうか。

 お断りをしてしまった相手のことを咲子はいつまでも考えた。

 見た目も悪くなく医者の卵の青年を、周りの女が放っておくわけがない。過去に付き合った人がいくらなんでもいないわけないだろう。その人とはタイミングが合わずに、元妻との結婚に至ったというわけなのだろうか。

 そんな、考えても栓のないことをグルグルと考えてしまう。
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