バスボムに、愛を込めて
7.キスできない男


三日後の金曜日、順調に定まってきたバスボムの方向性を皆で詰めていき、とりあえず三パターンの種類で行くことが決まった。

ひとつは、寧々さん提案の“花、植物系”
香りはもちろん形もその花を象ったものにし、アロマの癒し効果を出したいというもの。

もうひとつはお嬢が考えてきた“スイーツ系”

チョコやキャラメルの甘い香りを効かせて、形も思わず手に取りたくなるような、スイーツをモチーフに、プレゼント用としても喜ばれるようなものにしたいとのこと。

そして三つ目は、何を隠そうあたし考案の、“美容、健康系”(他のふたつに比べて可愛さに欠ける気がするけど、健康は大事だよね!)

新陳代謝をよくしたり、腰痛、肩凝りに効果があったり、肌に潤いをたっぷり補給するようなバスボムを作りたいのだ。ちなみに、形はまだいいのが思い付いていないのが課題。


「じゃあ、来週から具体的にひとつひとつの商品について検討していくからそのつもりでね。――と、言うわけで。今日はこれで終わりにして、楽しく飲みに行こうか」


五時過ぎの実験室。川端さんの言葉で、あたしたちの間に流れる空気が一気にふわっと軽くなった。

もちろんあたしの気持ちは急上昇。今週はこのために仕事を頑張ったようなものだもの。

白衣の下にはいつもより気合いを入れてお洒落してきたし、そのまた中には見せる予定なんてないのに勝負下着を着けてきた。

いや、だって……万が一ってこともあるじゃない?


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