生きていく上で抱いてしまう感情を、醜い感情を受け入れることは難しいことで、一度知ってしまった暗闇、感情は忘れることなく、在り続けるのだと思います。だけど、重みを背負うために、真っ暗でひとりぼっちの海で生まれて、様々な葛藤を抱えて生きていて、その中で優しい世界と世界の温もり、最初で最後の恋を知っていく"彼"、彼、彼女から伝わってきたことは感情の愛おしさでした。


「心をいじめちゃダメだよ、弱い自分を、もっと大切にしてあげてほしい。」


葛藤だらけの自分、感情を「仕方ないな」って受け入れること、それは強がりではなく強さなのだと、これからも抱いた感情と共に生きていくのだと、彼らが紡いだ日々の中で知って、ページを捲るほどに苦しくて、痛くて、堪えきれないほどの涙が溢れてしまったけれど、ページを捲れば捲るほどに愛おしく、痛さも全部全部抱きしめたくなって、最後には光とちいさな勇気が灯りました。

真緒は同じ学年の転校生・蒼とぶつかり互いの鞄の中身が散乱してしまう。
その後蒼の教科書を持って帰ってきたことが分かり、中には一通の手紙があることに気付く。
その手紙をきっかけに、真緒は蒼の違う一面を知るとともに、彼の“秘密”を知っていく——…。

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生きる上で抱く様々な感情。
そのなかで生まれた“彼”をはじめ、彼と向き合う真緒や登場人物たちの想いが、力強さと陽だまりを纏って真っ直ぐに描かれています。
頁を捲るほどに在る儚さといとしさと、確かに射す光。最後の最後まで目が離せず、彼らの覚悟にただただ涙が止まりませんでした。
真緒の紡ぐ明日は、これからも彼の想いとともに在り続けるのだと思います。たまにハンバーグも作り、食べながら。

私は私を生きるために、これからも私の抱いた感情とともに歩み続けていくんだ。
柔らかく、優しく、強く背中を押してくださって何度も読み返したくなる作品です。