どこか不可思議な雰囲気のする話でした。『人は愛する者のために死ねるのか』ある意味、究極の選択ともいえそうなことを選ばせる相手。それに対して真摯な態度で向き合う主人公。々とした雰囲気で進んでいますが、それだけにいろいろと考えさせられる内容だと思います。
自己犠牲の精神をどこまで保つことができるのか。「口ではいくらでもいえる」これは作中の人物が口にしたことですが、これは間違いのないことでしょう。それを越えられるものがあるのか。
それぞれに思うところは多々あるでしょう。その中で下された決断が導く結末。不可思議ではありながら、読後感はどこか爽やかな空気を感じさせるものでした。
なによりも、光景が絵のように見えてくる描写。水彩画のような雰囲気が作品によくあっています。短編ですが、いろいろと考えさせられる良作ではないでしょうか。普通の恋愛小説に飽きた方にぜひ、読んでいただきたい作品だと思います。