汐見 夏衛さんのレビュー一覧

★★★★★
2015/07/01 23:03
夢のような夜のギター

音楽、ロック、ビートルズをこよなく愛しておられる作家さんによる、小さな女の子の一夜の冒険。 一目惚れしたアコースティックギターを背負って、夜の街に繰り出したすず。 いつもと違う街の景色。 音楽を、ダンスを愛する若者たちの時間。 そこですずが出会ったのは………。 独特の空気感をもった素敵な作品です。 江國香織さんが書く児童文学をなんとなく思い出しました。 あなたもすずと一緒に小さな冒険をしてみてはいかがでしょう?

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★★★★★
2015/06/27 19:50
恋ってどうしようもない

恋って自分ではどうしようもないもの 好きになってはいけないと 頭では分かっていても 惹かれてしまう いっそ嫌いになりたいも思っても どうしても嫌いになんてなれない 自分の恋心に振り回されて 自分の恋心に苦しめられる 切ない…… とても切ない、けれど 最後には清々しい気持ちになれる 素敵な作品です ぜひご一読を!

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★★★★★
2015/05/29 08:03
不器用な若い二人を見守る五十女の述懐

これは純文学作品です。 簡潔で小粋な言い回しの文章、美しい情景描写、どこか他人事のような心理描写。 50ページ少しの短編ですが、読後には、シックでスマートなフランス映画を観た後のような感覚になりました。 人生の苦さを味わいつくしてきた五十女が、自分の店で働く若い二人ーー朴訥とした青年と、無表情な女子大生を見守りながら、 自分の過去を振り返る。 その脇にはいつも、美味しいパンとコーヒー。 無性にパンが食べたくなります。 とても素敵な小説です。コーヒーをお供に、ぜひぜひご一読を。

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★★★★★
2015/05/17 01:21
ヨワムシ ノ ハンゲキ

という言葉に反応したあなた! ぜひ読んでください。 これは作品中に出てくる、あるバンドの名前。これを英語に直すと……?この架空のバンドには、元ネタとなった現実のバンドがあります。思春期の葛藤、叫び出したいような衝動を音楽にし続けるこのバンドを、こよなく愛しておられる作者様の作品はいつでも、そういったやりきれない気持ちの高ぶりを言葉にしたもの。私はいつも「自分の思いを言葉にしてもらった!」と感じます。 「リヴオン」は圧倒的な世界観と緻密なストーリー展開に支えられた、とても斬新なSFファンタジー小説です。 まるでRPGゲームに入り込んだような臨場感と高揚感。文句なしに面白い! そして、底抜けに明るい主人公の抱える葛藤。誰もが心当たりのある気持ちかもしれません。 ぜひともご一読を。

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★★★★★
2015/03/22 13:52
冒険、孤独、愛。

非常に深く、重く、大きな作品です。 普通に考えれば小説二冊、いえ三冊書けるほどの深さのある作品です。 作者様の伝えたいテーマが、それほど多く、大きく、深いのです。 生きるとはどういうことか? 死ぬとはどういうことか? 孤独とは何か? 他人との関わり方とは? インターネット社会、オンラインゲームにおける対人関係の在り方とは? そして、愛とはどういうものか? 作者様が深く深く考え抜いた壮大なテーマが、冒険ゲームを通して読み手の心を貫きます。 とにかく、大きな作品です。ぜひ読んで、そして、考えてみてください。 生と死について、孤独について、 愛について。

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★★★★★
2015/02/04 19:23
斬新で、きれいな小説。

周りの「いわゆる女の子」に馴染めない、主人公の女の子・純。 そんな純が出会ったのは、同じく女嫌いな男の子・理央。 「女が嫌い」という共通項から、急速に仲良くなっていく二人。 でもそれは、友達同士のような関係。 そんな関係ががらりと変わる事件が起こって……… ボーイッシュな純の独白がとても軽やかで楽しくて、きっと女の子なら誰もが「分かる分かる、女子のそういうところがめんどくさいの!」と共感してしまう部分があると思います。 また、空咲さんらしい安定した文章は一文一文がとても印象的で、風景描写もさわやかで、すごくきれいな小説です。 特に私は、最後の一文がとってもお気に入りです! おすすめです、ぜひご一読を!

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★★★★★
2015/01/31 10:48
不器用すぎる……!

と悶えてしまうほど、可愛くて純情な男の子。 好きな女の子をいじめてしまう、典型的な小学生系男子です。 主人公の女の子も鈍感でおバカ(失礼)で微笑ましい。 キャラクターの個性だけでなく、テンポの良い文章と所々に散りばめられた笑いも魅力的です! とにかく胸キュン&爆笑必至のすてきな作品。ぜひぜひご一読を!

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★★★★★
2015/01/28 18:39
ネタバレ
すれ違う夫婦。

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★★★★★
2015/01/28 14:54
タイトルの妙

「その瞳に映りませんように」 「私」はユズキくんの瞳が好き。 でも、映りたくない。 それはどうしてなんだろう? その答えはなかなか明かされない。 ユズキくんの目の描写が、山田詠美さんの文章を彷彿とさせる。 鋭い観察眼を感じさせる透明な文章。 引き込まれながら読んでいくと、少しずつ二人の距離が縮まっていく。 でも、「私」はユズキくんの瞳に映りたくない。 クライマックスでその謎が明かされる。 そして、最終ページの最後の最後で、「その瞳に映りませんように」というタイトルに秘められた仕掛けがすとんと落ちてくる。 タイトルのつけ方、その扱い方が素晴らしい。 ぜひご一読を。

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★★★★★
2015/01/26 13:15
せつない余韻。

読後、なんともいえない余韻の漂う超短編小説。 短歌や詩のように、短い言葉に籠められた感情。 はっきりと書かれたわけでもないのに、切なさが伝わってくる。 最後のページまで読んで初めて、表紙に書かれた一言の意味がずしんと響く。 とても趣向の凝らされた素晴らしい作品です。

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★★★★★
2015/01/24 19:43
繊細な文章で描かれる美しい世界

繊細な文章力で描かれるのは、透き通って美しい絵画のような海底の世界。 そして、その中をゆったりと泳いでいく、「ぼく」と「人魚」。 最後まで話の展開が全く読めない。 でも、引き込まれて、次々とページをめくってしまう。 とにかく、美しくて不可思議で、そして心がほっこりと温まるお話です。 ぜひ読んでみてください。

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★★★★★
2015/01/24 19:33
クリスマスの可愛い奇跡

奇跡は起こるもの? いえ、起こすものです。 どこかピュアで不器用な主人公の女の子が、クリスマスの夜、可愛い奇跡を起こします。 とってもほのぼのする素敵な短編作品です。ぜひ読んでみてください。

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★★★★★
2015/01/20 19:48
圧倒的。鋭い言葉が心を切り裂く。

とにかく、圧倒された、の一言。 青春時代を苦しみ抜いたある小説家の、正直すぎる告白。 極限まで綾を削ぎ落とした簡潔な言葉たちが、心に突き刺さる。 主人公の苦しみも痛みも悲しみも、ひどく客観的に描かれているのに、まるで自分のことのようなリアリティをもって感情が迫ってくる。 たった一つの傷から始まったトラウマが、こんなにも長い間、途切れることなく人を苦しめるのか、と青ざめるような思いがした。 読むと、痛い。とても苦しい。 でも、ぜひ読んでほしい。 青春のまっただなかにいる人にも、青春を終えた人にも。 深い自省の中から生み出された言葉たちを、ぜひ真正面から受け止めてほしい。 『私が生きる理由は、小説を書くため』という一文が重い。 書くことで命を繋いでいる小説家の吐き出した言葉たち。だからこんなにも心を切り裂くんだ。

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2014/12/15 19:32
クールな女ギタリストのカッコいい生き様!

主人公のようこは、アングラでは定評のある女ギタリスト。 ジョン・レノンの命日に生を受けた。 そんな彼女の、20回目のDecember 8th、その一日のお話。 メジャーシーンのプロデュースに馴染まず、たった一人、ギター1本を相棒に、小さなライブハウスをさすらう孤高のギタリスト。 カッコよすぎる……! とにかく読んでみてください。 圧倒的な表現力と、ハードボイルドな世界観と、そしてヨーコのかっこよさに、必ずのめり込んでしまうことでしょう。 短い小説ではありますが、内容の濃さは一編の映画のようなのです。

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2014/11/23 17:59
まるで一編の詩のような

哀しくて、美しい世界 言葉の一つひとつが透き通っていて 悲しい心の二人が 吹雪の中で身を寄せ合う様子が 目に浮かぶようです まるで一編の詩のように 想像力をかきたてられる 美しい短編小説 ぜひ読んでみてください

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★★★★★
2014/11/23 07:47
まるで自分もバンドマンになったみたいな

感覚的でリアリティのある音楽描写 練習スタジオの空気感 ライブハウスの独特のにおい ライブの熱狂と高揚 楽器を奏で、音が合わさっていく興奮 ギターを弾く指の痛み とにかく描写がリアル まるで自分も一緒にメンバーとして音を奏でているような そんな気分になれる青春音楽小説 そして登場人物のクセの強さ 王子だけど毒舌なベーシスト 元ヤンだけど優しいギタリスト デブだけど紳士なドラマー あっという間に最後まで完読 とにかく読んでみてください!

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2014/11/07 21:04
ドンマイ、田中。(笑)

顔も普通、成績も普通、運動神経も普通、ついでに性格も普通。 とにかく普通な、『ミスター平均値』の田中くん。 ケータイ小説の相手役としては、あまりにも斬新すぎる。 でも、確かに、高校生の男の子って、こんなもんだよね!と、何度も頷いてしまいました。 男子同士でつるんでばっかりで、女子に対してはちょっと素っ気なかったり。 そういうリアルなところが妙に楽しい。 でも、田中は、普通の男の子なだけじゃないんです。 少しだけクールで、なにげに優しくて。 でもちょっと残念で、『ドンマイ、田中』な感じ。 まぁ、読んでみてください! いつの間にか、究極のフツメンに、究極にキュンキュンしちゃいますよ。

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2014/10/16 20:20
幻想の世界へようこそ

短い名品です。 いわくつきのモノが集まる不思議な骨董屋。飄々とした店主と、ミステリアスな青年。 幻想小説のような独特の雰囲気。 骨董屋の空気感。 そして、繊細な描写により、絵画のような、映画のワンシーンのような、鮮やかな情景。 読後には、切なくて、でも心が洗われるような、独特の清涼感が残ります。 ぜひご一読を!

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2014/08/30 02:35
思っていたことを言葉にしてくださった!

という感じです。 私は、もともとは紙の書籍ばかり読んでいて、正直「ケータイ小説、」と聞くだけで軽く見ていた節があったように思います……野いちご作家の皆さま、ごめんなさい。 でも、あるきっかけがあって野いちごに登録して以来、本当に見る目が変わりました。 確かに、文章が少し不自然だったり、誤字脱字が気になったり、最初は「やっぱ無理かあ」と思いながら読んでいました。 でも、なんででしょうね? ケータイ小説って、すごく、面白いんですよね。思った以上にのめりこんで、先が気になってしかたなくて、結局最後まで読み切ってしまう。そういう「読ませる力」があるんですよね。書籍化された下手な「純文学」作品よりも、ずっと。 それはなんでなんだろう?と追い求めていた答えを、与えてもらった気がします。

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