忠犬カノジョとご主人様
ソラ君とわたし①



「クルミの良い所は、従順な所だね」


つい三日前、彼氏に私の好きな所を聞いたら、眉一つ動かさずそう返された。

もともと同じ会社の同期だったソラ君。

私が5回告白してやっと付き合えることになったソラ君。
  ・・・
同期だったって言うのは、ソラ君は高学歴で要領の良いスーパーエリートだったので、今はもう同期だったけど上司になった。

1年付き合って、(私のアパートより二倍広い)ソラ君の家に転がり込んで、同棲を始めて半年。

彼は私の“ジュウジュン”な所を好きでいてくれたらしい。

従順と言う言葉を辞書で一応引いてみた。

性質・態度などがすなおで、人に逆らわないこと。おとなしくて人の言うことをよく聞くこと。また、そのさま。

私はその意味の中で“すなお”というワードだけ受け止めることにした。

そっかあ、ソラ君は私のすなおな所が好きなんだあ。そっかあ。


「バカじゃないの、犬じゃんそれ」

「違うよっ、家政婦だよ!」

「朝から泣かせないでお願い」


同期の菅ちゃんは、隣でパソコンで資料を作りながら頭を抱えた。

月曜日でも私は全然憂鬱じゃない。だってソラ君と帰る場所は同じだから。

春の昼下がりの事務室はぽかぽかしてて気持ちいいし、仕事も捗る。


「そんなことよりあんたいい加減デスクトップの画像海空さんにするのやめなよ…」

「すごいでしょこれ!? 入社式の写真ソラ君のとこだけ切り抜いて拡大したの!」

「そのちょっと写ってる肩私の肩だからね切り取られてるけど」

「ソラ君と出会ってもう3年かあ~」

「今でも覚えてるよ…、入社前の新人だけの飲み会で、皆が海空(ミソラ)さんのこと恐れてたのにずけずけ話しかけてたクルミのこと…」

「だってすごくない!? ロサンゼルス出身で高学歴でインターンのプレゼンで1位とった期待の新人って! そりゃ話しかけたいよ!」

「普通話しかけらんないでしょう余計……」

「しかもいい人だったし!」

「あの時はね……、上に行くほどだんだん本性表してきたけどね……」

「あー、はやく会いたい」

「クルミも本社いけるよう頑張るしかないね」

「うぬっ」


ソラ君の帰りは私より1時間遅い。

だからいつも私が先に帰ってご飯をつくって待ってる。

そりゃ仕事で疲れてるしすぐ寝たいけど、でも全然苦じゃない。

私が作った料理を、ソラ君が食べてくれる。それだけでいいの。

昔から恋人に貢ぐ…間違った恋人に傅く…いや違う恋人に尽くすことは苦じゃないし、むしろそれが生きがいだったから。

それが特に何もできない私の唯一の長所だし(正直長所かどうかは微妙だが)、ソラ君に尽くすことが私のライフスタイルになってるし。

< 1 / 71 >

この作品をシェア

pagetop