狂々にして仄暗く
一、天使に恋した悪魔


天使に恋をした悪魔がいた。

天使も悪魔に恋をしていた。

しかしながら、種族の違いにより、二人の恋は周りから酷く非難された。

「何としてでも、僕とあなたの仲を認めさせましょう」

結ばれないと泣く天使を抱きながら、悪魔は言う。

認めさせるために、悪魔は非難する者たちを根絶やしにすることを誓った。

それには、何者にも負けない強さがいる。

まず悪魔は、触れただけであらゆるもの壊す巨手を得た。ーー代わりに天使を抱けなくなる。


次に、どんな刃にも耐えうる鋼の肉体を得た。ーー代わりに天使の温もりを感じなくなる。


次に、どんなものでも噛み砕く獣の口を得た。ーー代わりに言葉を失った。

最後に、見たもの全てを石に変える瞳を眼窩に得た。ーー代わりに天使を見ることも叶わない。

悪魔は強くなり、天使との仲を反対する者を根絶やしとした。

彼らの仲を非難するものはいない。

これで、心置きなく愛し合える。

そう悪魔は思っていた。

天使の前、唯一、変わりない耳で天使の声を聞く。ーー泣きじゃくる天使の声を。


ただ、笑っていてほしいだけだったのに。

獣の雄叫びが、天使の悲痛と交じり合う。

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