さくらへようこそ
第1話「初冬」

1-1.突然のお客様

カランカラン

ドアに備えつけてあるベルが鳴ったと思ったら、
「さくらちゃん、いるかー?」

作業着姿の中年男が顔を出した。

彼は脱サラして街外れで工場を経営している工場長だ。

誰もいない店内には灯りだけはついているが、返事はない。

「何だ、無用心だなぁ」

工場長は呆れたように言うと、カウンターの隅に置いてあるカゴの中に1000円札を入れた。

工場長がカウンターの椅子に腰を下ろそうとした時、ベルが鳴った。
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