初恋は雪に包まれて
伊東くんと小山さん


伊東くんは、よくわからない人だ。


きっと職場の人たちに「伊東くんのイメージは?」なんて聞いて回ったら、ほとんどの人が「無愛想」「何を考えているかわからない」と口を揃えることだろう。

ちなみに私もその一人で。

私にとっても彼にとっても数少ない同期の一人なはずなのに、彼はあまり心を開こうとしない。私に対しても他の同期達に対しても、だ。


けれど、だからと言って仕事中も無愛想なのかと聞かれるとそうじゃない。

患者様に対してもあの冷めたような瞳を向けるのかと思えば、そんなこともなく、ニコリとはしないものの、丁寧な言葉と態度で接するのだ。




「小山のことが好きだからだろうが。」


だから、彼がこんな寒空の下でにこんなことを言うことも、

いつもに増して鋭くなった視線を向けられているこの状況も、

私にはよくわからない。


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