恋愛温度差
味覚音痴王子からのお誘い!?
「チーズケーキのタルトとチョコレートケーキを一つずつ……」

 ケーキの入っているショーケースに視線を落として、ライバル洋菓子店のバイト君である君野 旺志(23歳)がコートのポケットに手を入れたまま、注文している。

 端正な顔立ちで、顔の一つ一つのパーツが整っており、肌も女性のようにキメがあって透き通っている。

 たしかどっかの国のハーフ君かクォーター君だったとかって耳に入れた記憶があるが、正確な情報ではない。

 ライバル店のバイト君だし。

 全く興味がない……というわけじゃないが、別にカレがナニ人だろうが、私には関係のないことだ。

「お持ち帰りですか? こちらでお召し上がりですか?」

 私は接客マニュアル通りに質問を投げる。

 うちの店には3席ほどの丸テーブルが窓際に設置されている。

 ケーキを買ってすぐに食べられるのだ。余計かもしれないが、父親自慢の紅茶がサービスでついてくる。

「食べていきます。あと……」と君野くんの言葉が途切れて、顔があがった。

 え? まだ頼むの!?

 私はちらりと時計を見やる。

 今は午後2時。

 おやつタイムには少し早い。昼休憩で、ランチ代わりのケーキ……という感じで2個も3個も食べるのか。

 それとも視察か?

 チーズケーキとチョコケーキの試作をしてて、うちの店の味を研究材料として食べに来たのか。

 私は入らぬ詮索を頭の中で繰り広げながら、君野くんの次の言葉を待つ。

 君野くんは、一呼吸おくと私の目をまっすぐに見つめてきた。

「姫宮 あかりさん……明日の金曜日ってあいてますか?」

「はあっ!?」

 私は目を丸くする。

 この子は一体、何を言い出したのか。なんの意図があるのか。

 君野くんのお誘いのお言葉に、私の脳は一時急停止を余儀なくされた。

 
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