ファインダー越しの恋
1.桜満開
満員電車に揺られ、私、柏木桜子は初出勤をする。

電車の窓からは、満開の桜がたくさん見られた。
それを見ただけで、心がウキウキした。

『桜子』という名前は、両親がすぐに浮かんだ名前。
私が生まれたのは、こんな満開の桜が見られる4月2日。

桜色の頬が桜に良く似ていたそうで、すぐにその名前が決まったと、母から聞いた。

満員電車を降り、会社に向かう途中、桜並木を通る。入社試験の時にはまだまだ桜は固く閉じられた蕾だった。

「わぁ・・・綺麗」
私は溜息を洩らしながら、桜を見上げ、ゆっくりと歩いていく。

…出社時間より、早く出てきてよかったと、改めて思った。

「・・・・」
桜並木を歩く人はまばら。そんな中、桜並木の真ん中で、カメラを撮っている人が視界に入った。

何枚か写真を撮った後、その人はカメラをおろすと、私の方を見た。

・・・そして、優しく微笑んだ。

私はそのあまりに綺麗な容姿に、心奪われ、言葉を失った。

そんな私を尻目に、桜吹雪の中、彼は、姿を消した。
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