ラブエンゲージと甘い嘘
プロローグ
「お前この俺に恥をかかせるなんて、一体どういうつもりなんだ?」

低くて冷たいその声色と、不機嫌なその表情から彼の怒りが手に取るようにわかった。

「も、も、も……」

「桃?」

ち、違うそんなこと今、言うはずないじゃない!

「も、申し訳ありませんでした」

頭を勢いよく下げて相手に謝ると同時に、私は自分の迂闊さと変な正義感を呪った。

……今さら後悔しても遅い。

頭上から「はぁ」という男の盛大なため息が聞こえてきた。私がもし、彼の立場なら無理もないと思う。

「どうやって、“オトシマエ”つけてくれるわけ?」

オトシマエって、そんな物騒な。もしかして、この業界独特のオトシマエのつけ方があるってこと……?

「あの私に出来ることなら頑張ります。その……具体的にはどういったことでしょうか?」

「ん〜そうだなぁ」

シャープな顎を長い指で撫でながら、私に背を向けて考えている。ガラス窓に映るその姿は、他人が見ればため息がでるほど美しかった。

けれど死刑宣告を待つ私にとっては、どうでもいいことだ。
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