国王陛下は無垢な姫君を甘やかに寵愛する
第一章 島の人々の自由
近隣の国々より強大で裕福なラウニオン国。

南に位置する鉱山は主にルビーやエメラルド、北では金や銀なども生み出し、非常に恵まれた国である。

首都港町ラーヴァを中心に各国との交易が盛んな国で、隣町アルジェントには金細工師が多く、彼らが造る繊細な装飾品は他国でもとても価値があり、高値で売買されている。

中でもラウニオン王室の御用達である名人ナッサルの右に出るものは他国を探してもいない。

ラーヴァの外れに、侵入者を寄せつけない高さのある城壁に囲まれた奥に優美な城がある。

民から軍神とあがめられている若き王、ユリウス・カルダーラ・ラウニオン3世がこの国を統一していた。

現在23歳のユリウスは15歳の頃から、この裕福なラウニオンを狙う国との戦いに出立していた。

艶やかな腰まであるシルバーブロンド、切れ長の目はエメラルドグリーン、鼻梁はスッと整い、上品な顔立ち。

中性的な美しさを持つユリウスだが、幼い頃から剣の鍛錬を受けていた身体は引き締まり、見事なほどの美丈夫だ。

ユリウスが愛馬である白馬に乗れば、敵を一瞬で蹴散らかし、勝利をもたらす。

齢16歳にしてユリウスはこの国の王となった。

前王はユリウスが15歳のとき、隣国の間者によって暗殺された。

そのとき一緒にいた王妃も絶息だった。

その報復としてユリウスは百人ほどの兵士たちと敵地に乗り込み、王族を根絶やしにした功績で、彼がラウニオンの王に相応しいと即位した。

ユリウスは冷酷無慈悲、気に入らない者は即刻剣を一振りすると噂されているが、それは戦場でのことだ。

ユリウスは気に入らないといって、人をすぐに殺すことはしない。

現在、ラウニオン国に軍神ユリウス王ありと、遠い他国までその名を轟かせ、ここ五年間、国を狙う他国はいない。

民は彼を賢王としてあがめていた。

ユリウスは信頼している側近しか置かず、何より自分に取り入ろうとする者に嫌悪している。

まだ妃を娶っていないユリウスに娘をぜひ妻にと、隣国の王や貴族たちからの話は後を絶たない。

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