雪情
第1章 刑事と犯人
【雪山―1】


「寒いな……」






小柄な男はそう呟いた。






雪は先ほどから変わらず
吹雪いており、
止む気配がない。







「………」







隣の男は
先程から
口を開こうとせず、
黙ったまま立っている。







ここは小さな駅の
休憩所である。







しかし、
雪のせいで
中からは外の様子は
分からない。







いや、
雪のせいでなくとも
周りは家一つない
小さな村の駅なので、
何も見えないのは
当たり前である。








その小さな駅の休憩所で
震えている
小柄な男の名は
田崎剣一。






小さな体に似合わず
長いコートにネクタイ姿


走りやすい靴を
履いている。


いかにも
刑事のような格好で
あるが、

その通り
この男は刑事なのである







しかし、
駅の休憩所といえ、
薄でのコートでの寒さは
半端ではない。








一方
もう一人の無表情な男は

この大雪にも
耐えられそうな
暖かい格好をしている。








背は少し高めで
細身な感じである。






二人はしばらく
黙っていると、
奥の部屋から駅員が
出てきた。







「やっぱり
電車は雪で不通だ。
ま、この村じゃ
珍しくもないだけどな~

アンタどこから
来なすっただ?
そんな薄着じゃ
宿までもたんぞ」








駅員はいかにもといった
地方弁で話した
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