モノクロォムの硝子鳥
Ⅰ.黒雨

ひゆにとって、家庭は小さな「檻」だった。

決して苦痛は無く――また、幸せでも無かった。


可も無く不可も無く、
ただひゆを「生かす」だけの場所。

その場所に、ひゆは特に不満を感じていなかった。


何も感じる事も
言葉にする事すら、無い。


いっそ「檻」から飛び出してしまえば何かが変わるかもしれない。
そんな考えすら浮かびもしない、心を何処かに置き忘れてしまったような自分。




――例え、「檻」から出たとしても。

先に広がる世界が「檻」と変わらない、「無機質な箱庭」としか自分には映らないのを、ひゆは知っていた――…。



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