陰陽(教)師
第1話 バン・ウン・タラク・キリク・アク 【P1~P72】
「帰ろうよォヒロシぃ。なんかヤバいって」

「大丈夫だって。びびんなよ、ナナ」

時刻は午後10時過ぎ。

風の強い夜だった。

町外れの一軒家の前にそのカップルはいた。

ロングヘアーで、男女どちらとも小麦色の肌。

女はデニムのミニスカートにブーツ、ベージュのダウンに白いニットキャップ。

男も同じ色のニットキャップにモスグリーンのダウン、ところどころすり切れたジーンズにスニーカー。

ヒロシと呼ばれた男はハンディカムカメラを手にしていた。

「コイツでバッチリ撮れば、高く売れるぜ」

ヒロシは得意げにカメラを掲げた。

「けどさぁ、ここ本当に【出る】って言うじゃん…」

「なに言ってんだオメー、本当に幽霊が出なきゃ意味ねーべ」

空き家になった家に行って恐怖映像を撮ろう。

TV局に売ればいい金になるかもしれない。

そんなことを思いついたヒロシは、恋人のナナを連れ出し、この家までやって来た。

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