ランデヴー
【prologue ―譲れないもの― 】
「ゆかりさぁ、ほんっといつも抜かりないよねぇ」



都会の片隅にあるcafeでコーヒーを飲みながら、のんびりと過ごす休日。


佐和子が私の爪をしげしげと眺めながら口を開いた。



そこにはOLの見本のような、白のフレンチ。


今日は少し大きめのストーンを薬指に乗せてみた。


午前中にネイルサロンへ行ったばかりだ。



「うん、これだけは外せない」



そう、自分磨きだけは絶対に外せない。


私が私である為に、自分にはお金も手間もかける。



佐和子はこの後デートだと言うので、夜はエステの予約を入れてある。



「そんっなにお金も時間もかけてるのに、勿体ないよ。世の中には星の数ほど男がいるんだよ? ゆかりくらい可愛かったらよりどりみどりだと思うけどなぁ」


佐和子のそんなセリフは何度も聞いている。


私が「またか」という顔をしたのだろう。



「ハイハイ、わかってます。何度言っても答えは一緒、でしょ?」


佐和子が先回りして、ヤレヤレという顔をした。
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