雨粒のワルツ
1.ピアノの彼
大学に入学してすぐ、私はピアノの彼に恋をした。










少し校舎を見て回ろうと旧校舎のほうに足を向ける。

こちらの棟は老朽化で夏には取り壊される予定で、ほとんど人は通ってこない。

けれど、満開の桜がとても美しく、優しく流れる風が花びらを乗せて運んでいた。


「わぁ」


思わず写真を撮ろうと携帯を片手に校舎に近づいた時

かすかにメロディが聞こえてくる。







ピアノの音・・・?



私は正面玄関には回らず、裏の窓の外からそっと中を覗き込む。






放課後の音楽室でピアノを弾いているその人は

春の日差しを浴びてキラキラ光っていた。
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