週末の薬指
惹かれる気持ち

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桜が散って、緑濃くなるこの季節、妙に切なくなるから好きじゃない。
別れや出会いに泣いたり、緊張しながらの新しい生活を迎える事が多い時期だからかな。
若くない私には、それなりの経験があって、この季節特有の涙もたくさん流した。

ほんの少し寂しくて、過去を振り返る重みを感じながら、会社を出た。

春一番は先週だったかな。

明るい色の服に身を包んで、まだまだ明るい夕方のオフィス街を歩くのは久しぶりだ。
いつもなら残業で、真っ暗な中、駅まで向かうのに。
肩にかけたトートバッグをぎゅっと握って、何も考えないように一生懸命に歩いていると、それだけで少しは気持ちも浮上できそうな気がする。

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