ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
ファースト・トラップ

  おためしの恋愛  梓side


あぁ~もうっ、いい加減にして欲しい。

毎日毎日終業時間になると寄ってくる上司や同僚たちは、一体何を考えているんだろう。こっちは嫌だって毎度断ってるんだから、そろそろ学習しろってんだっ! そんな下心丸見えで誘われて、誰がついて行くかっ!!

憤慨しながらも、少しづつ秋の色に色づき始めた木々が立つ並木道を、小走りに急いだ。

今日は親友の誕生日。よく行くカクテルバーで待ち合わせをしていた。そんな日に限っていつもよりしつこく絡まれ、なかなか返してもらえないなんて……。
ついてないったらありゃしない。

勢い良く角を曲がると、古びた木の看板に『Secret garden』の文字が、淡い光りに照らされていた。ほっと一息つくと、店の少し重たい扉を開けた。

「いらっしゃいませ」

扉の近くに立っていた店員、柏原雅哉(かしはら まさや)に声をかけられる。

「どうも。枝里来てる?」

「お店の開店と同時に入ってきたよ」

そう言って、人差し指を二本、頭の上に立てた。
あぁ、怒ってるのね……。
肩を窄め苦笑してみせると、足音を立てないようにカウンターに近づいた。


< 1 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop