広い背中
こんな女にしたのは
背中にそっと耳を寄せる。どく、どく...通常よりも早く刻まれる音に、嬉しくてニヤニヤしてしまう。

「ねぇ、心臓の音、すごいよ?」

ビクッとする背中。落ちそうになって誠の首に回した手をぐっと絞めてしまった。

「ぐっ..」
「あぁ、ごめんごめん」

慌てて手を緩めると、誠はげほっと咳をした。

「お前なぁ、普通そういうこと言う?」

彼がいる私に、もう何年も片想いしてる誠。私が誠の気持ちに気づいているのは誠もわかってる。

自分でも性格わるいなーとは思うんだけど、誠の顔を見ると、つい意地悪したくなってしまう。

小学生の男の子のようだ。

誠が支えている足をプラプラと揺らしながら、私はわざと誠のTシャツからのぞく首元にすりすりと顔を擦りつけた。

「おまっ、マジでやめろって!」

首をよじって逃れようとするから、私はもっと苛めたくなって、ほてり始めた首元にちゅっと口づけた。

「...っ」

グッと堪えたのか、誠は息を殺してその場に立ち止まった。

唇を離しても一向に歩き出さない。

酔った頭でも、さすがにやりすぎだということはわかってた。わかっていて、やったのだ。
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