ダイス
世界は廻る、何事も無く。




あれから十年以上の歳月が経過している。


浅川紗江子は墓石の前で静かに合掌した。


夏の熱気が身体を取り巻き、太陽の陽射しがじりじりと半袖から出た腕を照らす。


お盆の時期である今は、そこらじゅうから線香と花の匂いが入り雑じって漂っている。

自責の念? そんなもの、あるはずがないわ。


隣に立つ背の高い男の横顔を見ながら腹の中で毒吐いた。


そんなものは、あんたが持つものでしょう?


隣に立つ男はまだ目を開けずに手を合わせている。


「……先に帰るわよ」


紗江子はその横顔に向かって言った。


すると男はゆっくりと目を開き、紗江子に視線を向けた。


フランスだかイタリアと日本人とのハーフの彼は鼻が高く、色が白い。


「相変わらず薄情なんだな」


男――芹澤誠は無表情でそう言い放った。




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