君を抱く手なのに傷付けそうで
溺愛故の嫉妬に束縛


(一)


嫌なものを見てしまった。


会社の営業で外回りをしていた時のこと、見間違いではないかと、かけていたメガネを外す。


両目0.2のぼやけた世界を一度指でこすり、再度メガネをかけ直す。


「……」


深呼吸。目を開く。


オープンテラスつきの喫茶店。青空に良く栄えるモダンなその場で、俺の彼女が別の男とお茶をしていたのを見た。


街中で彼女に会うのはそう珍しくない。外回りが多い俺に、大学生たる彼女。友人と遊んでいるのをよく見かける。


言わずもがな、“あれ”も友人なのだろう。


講義の話か。ノートを開き、見せ合い、時には談笑も交えて、至って普通の学生生活に違いない。青春の一場面とも言えよう。


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