君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
新しい生活
「ふっ...!副社長...っ!なぜにこちらに?」


息を切らしている私を見ると、満足そうに微笑む副社長。
そしていつもの決まり文句を言う。


「あっれ~?言わなかったっけ?櫻田さんに。おっかしいなぁ」


「...またですか?副社長!!」


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橘さんと藤原さんの結婚式から約一年。
そう。つまり東野さん...。じゃなくて、圭吾さんとお付き合いを始めて一年が過ぎた。


「いやー、ごめんごめん。櫻田さんって橘さんとは違って、からかいがいがあるからね。つい虐めたくなっちゃうんだよねー」


「虐めないで下さい!」


転職...。いや、出戻りして三ヶ月。
私は今、副社長の秘書として働いている。

それと言うのも、事の発端は橘さんの一言から。


『あなた、副社長の秘書やってくれない?』


橘さんは今、産休中で。切迫早産になってしまい早めの産休に入った。
入ったはいいけど、後釜の副社長秘書が続かず。たった数ヵ月で数人の秘書がついたみたいだけど、みんな無理と言って辞めていったみたい。
そんな時、私に白羽の矢が向いた。
勤めていた会社は好きだったし、地元で両親と暮らす生活も気に入っていた。
だけどやっぱり私は、圭吾さんが大好きで。たまに本社に戻ってやらなくちゃいけない仕事もあるって言ってたし。
会える時は会いたいし。だから引き受けたものの...。

みんなが副社長の秘書を辞めたくなる気持ちが分かる。


「あっ、そうそう。因みに明日は大阪に行くからよろしくね」


「えっ!!またですか!?」


副社長に言われ、慌ててスケジュール帳を取り出す。


「えっ!ちょっと待って下さい副社長!明日は岡野インテリアとの商談がー...!」


「それ、明後日に変更って伝えてもらってもいい?明日は大阪の方が大事だからさ」


にっ、にこって...。

笑えば何でも許されると思ってるんですか!!
それが四十歳を目前にした会社の時期トップがやることですか!!


「...とは、言えないのよねぇ」


「おい菜々子。溜め息やめてくんねぇか?せっかくの酒が不味くなる」


そう言いながらも、お猪口の日本酒を一気に飲み干す桜子。

東京に戻ってきてから会社帰り、週に数回はこうやって桜子と飲むのが日課となっている。


「あーあ。なんで副社長ってあんな自由奔放なのかしら」


「そらお偉いさんだからじゃねぇの?自由奔放だからこそ、副社長様なんだろ」


「まっ、まぁ...。それはそうかもしれないけどさ」
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