ヴァニタス
終わりの物語
上に視線を向けると、桜の花びらがヒラリヒラリ。

それは雪のように舞い散る。

ヒラリヒラリ…

「また来年も見れるといいな」

私を腕の中に閉じ込めている彼が言った。

「こうして2人で、花見ができるといいな」

そうだね。

私もまた、あなたと一緒に見たい。

来年だけじゃない。

再来年も、5年後も、10年後も…ずっと、ずっとあなたと一緒に見たい。

そっと、私は彼にもたれかかった。

好き…。

この人を、愛してる…。

心の中で愛の言葉を言って、そっと目を閉じた。

頬に冷たいものが伝う。

それ以上に冷たい風が吹いた。
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