他校の君。【完】
彼のもの



ー…
………


「香澄はどれがいい?」


一臣君に聞かれて、あたしは『うーん』と考える。

チョコもいいし、抹茶もいいし、ハムチーズサラダだって食べたい。

あ、苺もいいなぁ。


「うーん…」


甘くて、いい香りがする屋台の前。

たくさん種類のあるクレープにあたしはさらに首を傾ける。

あれもこれも美味しそうで全部食べたい。

でも入らない。


「どれで悩んでんの?」

「生チョコホイップか苺か抹茶ずんだ餅。あ、でもでも甘いのじゃなくてサラダも…」

「じゃあ甘いの一個な?」

「う?うん」


一臣君に言われてあたしはメニュー表をジーッと見つめる。


「じゃ、じゃあ…苺…じゃなくて生チョコホイップ」

「ん。じゃあ生チョコホイップとハムチーズサラダください」


やっと決めたあたしに頷いた一臣君は屋台の人に注文してくれる。

注文したクレープが出来るのを待ちながら一臣君に


「一臣君はサラダ?」


聞いてみると、


「サラダも食べたいんだろ?」


頭をグイグイと撫でられた。


「や、た、食べたいけど」

「二個も食べらんねーなら分ければいいだろ」

「……いいの?」

「いい」

「……っ、あり…がとう」


< 193 / 299 >

この作品をシェア

pagetop