~LOVE GAME~
GAME3

距離



龍輝君の自信に何も言い返せず、床に座り込む。

「とりあえず教室戻るぞ」

ヘタリと座り込んだ私の腕を掴み、さっさと部屋を出た。
廊下へ出ると、私は俯いたまま龍輝君から離れようとした。

……が。

「……ねぇ、なんで着いて来るの?」

私の後ろをピッタリと着いてくる龍輝君に、業を煮やして振り向く。
そこには優しく微笑む龍輝君がいた。

「楓ちゃん、送るよ」

ええっ、誰!?
笑顔が!笑顔が別人ですけど!?
さっきまでの雰囲気とはガラリと変わり、優しい爽やかな春岡龍輝君がそこにはいた。
表の顔だ。ギャップ激しすぎるでしょう……。

「送っていただかなくて結構です」

学校内で送ってもらう理由もないし、そもそも周りの目が気になる。
すでにチラチラ見られてるし……。
変な噂も出始めているのにやめて欲しい。

あ、これも惚れさせる作戦のひとつ!?

断っても着いて来るので私はなるべく早足で教室へ戻る。
教室の前でくるりと振り向くと、ニコニコと微笑む龍輝君がハッキリと言った。

「今日は楽しかった。明日も誘っていいかな」
「えぇっ!?」

と、私が叫ぶのと、教室にいた女子が叫んだのはほぼ同時。

絶対わざとだ!

私は龍輝君を軽く睨む。
それでもお構いなしに龍輝君は「ダメかな?」と困った顔で言ってくる。
そんな困り顔に「可愛い~」という声も聞かれた。

これ確信犯じゃん!

周りから見られているから断りにくい。
私は渋々頷くしかなく、龍輝君は嬉しそうに(作った笑顔で)自分の教室に帰っていった
周りから固めるとはこのことだ。
あれから私は皆に色々と質問攻めにあい、廊下を歩けば注目されるようになった。

ただでさえ、龍輝君と噂され始めていたのに、輪をかけて、”あの春岡龍輝”に自ら誘われた女となったのだ。

ハァ~…。

自然と重いため息が出る
龍輝君はこの状況を楽しんでいる。
振り回されている私を見て面白がり、暇つぶしに私をからかい、惚れさせる。
傷のことを脅しの材料として、遊んでいるんだ。
彼にとってはとてもいい遊び相手なのだろう。

「悔しい……」

それなのに、どこか完全に拒否出来ない私がいる。
どうして……?

「楓?」
「あ、何?」

噂のこともあって、ここ数日は授業にも身が入らず、ずっと上の空だった。
ちなに呼ばれてハッと顔を上げる。

「委員会の時間じゃない?」

ちなにそう言われ時計を見ると確かに委員会の時間だった。


< 37 / 84 >

この作品をシェア

pagetop