【短】同窓会―episode 1―
15年後





「蒼ちゃん。」


辛そうな表情で、横になったまま必死に手を伸ばす。


俺は黙ってその手を握った。


「蒼ちゃん。
お願いがあるの…」

「ん?」

俺は消えそうな声に必死に耳を傾ける。

もうすぐ消えるだろう命の灯火が、ゆらゆらと揺れているような気がした。


「蒼ちゃん。
私を、忘れないで…。」


「忘れないよ。」


それを聞いて笑顔になるあいつは、今にも消えてしまいそうだった。


「蒼ちゃん…。
……………ね。」


「…え?」


「…蒼ちゃん。
…さよならだね。」


あいつはそう言ってまた笑った。


「な…なに言ってんの…
俺、まだ帰らねーよ…。」


本当は、わかっていた。

もう、長くないことを。

でも、そんな現実は、見たくなかった…。


「……私、そ…ちゃんが………」


何かを言いかけて、そのまま、あいつは目を閉じた。


まるで眠っているようだった。



15年前のあの日、俺は大切な人を失った。



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