孤高の天使
1章 舞い堕ちた天使

天使の涙




清らかな大気に包まれた広大な空間……天界――――

神と天使が住まう天界は大気に舞う光の粒子で満ちあふれ、空間そのものが光り輝いている。

朝露に濡れる花弁に光を落とし、明け方を迎えようとしている頃、淡い燈色で包まれた天界の一角で天使が目覚めようとしていた。



「んっ………」

樹から吊り提げられた繭の様な球体の中で眠る天使は差し込む朝日を瞼の内で感じる。

しかし、天使は何処か苦し気な声を漏らしただけで、まるで何かに怯えるように瞼を閉じたまま膝を抱める手の力が強まった。

身じろぎした拍子にわずかに揺れた天使の家。それに気づいたのは天使の家に寄り添うようにして眠っていた獣だった。

白に近い白銀の毛並みに琥珀色の瞳を持つそれは、天界に住まう聖獣で、神の使いと呼ばれている。

聖獣は狼のようにすらりとした胴体を持ち上げ、黒い鼻先で探るように天使の眠る球体の中へ入れた。

隙間から入り込む空気はまだ肌寒く、天使は無意識に身を震わせる。

鼻先が天使の背中に突き当り、甘える様な仕草で聖獣が鳴いた。

自分の体を揺らす感覚と寒さに天使は何度か長い睫毛を震わせた後、薄らと瞼を持ち上げた。

途端、天使の頬に流れる涙。長い睫毛から覗いた琥珀色の瞳は濡れていた。


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