剣舞
第ニ章 狩人
酒場の客の、ほぼ大半が、新しい客と入れ代わる。

やはり、この店は客の回転が早い。

オリビアは、周囲の空気の流れを読み、ステージの上手から再び姿を現す。

楽師たちが、彼女に合わせ演奏を舞楽に変更していく。

ほぼ、全員の眼が、自分に集中したのを感じ、オリビアは、この国の古典民謡を踊り始めた。

酒場に集う、オトコとオンナの、これからのひと時を連想させるかの様な、情熱的な音楽と動きに、客人達が陶酔しはじめる。

広めの通路を舞ながら歩けば、男からも女からも、紙幣や硬貨が差し出した花籠に、山盛り投げ込まれた。

彼女も店にいる全ての者が、同じ空気にのまれていた。

誰も、男がひとり、店に入ってきたことに気付きもしなかった。

その男は、静かに、扉近くのテーブルについて、オリビアの舞を観覧しはじめる。

これまでに会った誰よりも美しく、躍動的で魅力的な肢体。
エキゾチックな顔付きが、彼女の肉感を更に高める。

キャンドルの炎に浮かぶ影は、幻そのもので、男は、オリビアにくぎづけになっていた。


 
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