桜色を覚えた絵









桜が満開で風が強い今こそ、恋人の為のお花見日和だ。

散ってしまった花びらたちは川に流れてしまうからもったいないけれど、

空の色をした舞台でまた華麗にワルツを踊れるから大丈夫。


花吹雪は視界を恋の色に染め、周りから隠してくれるから甘いお花畑の国へと世界が変わり、

二人きりの魔法をかけてくれる。





「冷えてきたし。そろそろ帰ろっか」

グロスについた花びらを洋平が摘んでくれた時に彼の指が唇に触れ、自然に結衣がゆっくりとまつ毛を伏せたなら、

それはやっぱり恋の味がした。



いつか彼と答え合わせをしてみたい、どんな絵の具で筆を踊らせるのかを。

好きな人越しに見える花びらが作る世界は凄く綺麗だったから、

忘れたくても忘れられない今になった瞬間の桜色は来年にはない一枚だった。










〓桜色を覚えた絵
〓おわり




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