ある夏の物語
夏のある日



学校は騒然としていた。



美鶴の父親が、母親を刺し殺したという連絡が学校に入った。



どうやら少し前___去年から離婚の話が出ていたらしい。



父親のリストラのせいで家族が狂い、母親が別れたがったという。



酒に溺れて母親に暴力をふるうようになったのは、この春から。



職員会議を盗み聞きしたクラスメイトが興奮して口外するのを聞いたあたしの頭に、一度だけ会った綺麗な金髪の女性の笑顔が浮かんだ。



あの人が、亡くなった。



ショックは、思いのほか大きかった。



そして、次に頭に浮かんだのは、美鶴。



行方不明らしい。



今、警察が捜索中。



生死は不明だった。



美鶴の様子がおかしかった理由が、わかった気がした。



去年からもともと物静かだったのを輪をかけたように無口になり人を関わるのを嫌がった。



そして、極めつけは「将来がない」という台詞。



あたしはサーッと血の気が引いていくのを感じた。



美鶴、今どこなの?



無事なの?




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