腐女子も恋していいですか?
聡のお願い
「これ、とか?」
 聡くんは、上半身裸の男二人が、ベッドで抱き合っている表紙を私に見せる。


「それって確か、友子ちゃんが持ってるリストに入ってるよね」
「えっ!? 本当?」
 

 聡くんはポケットから、この間見せてくれた、友子ちゃん所有BLコミックリストが書いてある紙を出した。


「あ、本当だ。岬、よく覚えてんな。岬って記憶力抜群だな」


 だって、友子ちゃんが持っている本、私も全部持っているんだもの。
 そんなこと、口が裂けても言えないけど。



 今、聡くんと2人、私のバイト先の書店で、聡くんの妹、友子ちゃんに渡すBLコミックを選んでいる最中。


 桜庭たちも一緒に来るかと思いきや、放課後、一緒に帰ろうと声をかけられて振り向くと、聡くん一人だった。


 聖は最初一緒に行く。と言っていたけれど、放課後に近づくにつれて、やっぱり邪魔するよりも、自分の彼氏をゲットする方がいい。という結論に達したらしく、高校は違うけど、同じ中学校だった友達に連絡して、合コンを開いてもらう! と意気込んで帰って行った。



「今日、桜庭くんたちも来ると思ったよ」
 率直に、思ったことを言うと、珍しく聡くんの顔が嫌そうに歪んだ。


 珍しい。聡くんも嫌な顔するんだ・・・・・・。
 いつでもニコニコ優しい笑顔だから。
男子たちに何されても、本気で怒ったところなんて見たこと無いし。


「まさか、妹のBL本を選びに行く、とは言えないしね」
 いつもの穏やかな笑顔を私に向ける。


 あれ? さっきの嫌そうな顔…気のせい?
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